圧縮空気(圧縮エアー)の品質 お客様のバリデーションに現場作業で関わる当社ならではの情報を交えてお届けします。
このページでは、液体噴霧、乾燥、包装など、製造現場で様々な用途に利用されている圧縮空気(エアー)について、圧縮空気の品質に関する設備の稼動原理から、適格性評価の実態・実験データ、関連規格など、適格性評価業務としてお客様のバリデーションに現場作業で関わる当社ならではの情報を交えてお届けします。
- 圧縮空気(エアー)の品質を実現している機器の構成(仕組み)
- 圧縮空気(エアー)の品質の実態(適格性評価・測定の必要性)
- 圧縮空気(エアー)の品質(適格性評価・測定)の項目例
- 圧縮空気(エアー)の品質に関連する規格の情報
1.圧縮空気(エアー)の品質を実現している機器の構成(仕組み)
圧縮空気(エアー)の品質は「空気を圧縮する」だけでは実現出来ません。
圧縮空気の品質を実現するための供給設備は用途により様々ですが、一例を以下に示します。
各機器の働きと機能
機器名 | 働き・機能 |
---|---|
①コンプレッサ | 空気を圧縮し、昇圧する |
②アフタークーラ | 圧縮により高温になった空気を冷却し、水分を除去する |
③エアタンク | 圧縮空気を一時的に貯留し供給時の圧力変動を抑える |
④エアフィルタ(メインライン) | 圧縮空気中の不純物(微粒子、オイルなど)を除去する |
⑤エアドライヤ | 圧縮空気中の水分を除去して乾燥させる |
⑥エアレギュレータ | 所定の圧力に減圧・調整する |
⑦エアフィルタ | 圧縮空気中の不純物(微粒子、オイルなど)を除去する |
2.圧縮空気(エアー)の品質の実態(適格性評価・測定の必要性)
圧縮空気(エアー)は、医薬品製造・食品製造等の様々な製造工程で用いられています。
製品自体や容器などに圧縮空気が直接触れる機会もあり、その品質(汚染物質の存在)が問題になります。
そこで、圧縮空気の供給システムでは、これら汚染物質を除去して、圧縮空気の品質を確保することが考慮されますが、実際の使用場所でどの程度の品質になっているかは分かりません。
⇒こんな時には、圧縮空気が実際に使われる場所で、必要な品質になっているかの確認が有効です。
圧縮空気(エアー)の規格(ISO8573/JISB8392)内に記載されている汚染物質
汚染物質 | 汚染物質の説明 |
---|---|
①固体粒子 | 固体物質でできている粒子。パーティクル。 コンプレッサ周辺に浮遊する塵埃(じんあい)のほか、コンプレッサ・バルブなど可動部・摺動部との接触箇所から発生する。 |
②水分 | 水。水滴として存在しない場合は露点温度で表される。 配管系統に樹脂製の配管があると、配管周囲の水分が内部に浸透し、露点温度が上昇(悪化)することがある。 |
③オイル | 炭素原子6個以上で構成された炭化水素。存在状態によりオイルミスト、オイル蒸気に分かれる。 オイルミスト…気体中に浮遊する液状オイル。オイルエアロゾル(oil aerosol)。 オイル蒸気…気体の状態で存在するオイル。オイルベーパー(oil vapor)。 |
④ガス状汚染物質 | 炭素原子が5個以下(C1~C5)のガス状の汚染物質(C6以上はオイルとして計測)。 一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、炭化水素(HC C1~C5)などのガス。 |
⑤微生物 | 肉眼で見えない微小な生物の総称。細菌(バクテリア)、真菌(カビ・酵母)など。 培地に付着させると増えてコロニー(肉眼で見える集まり)になる。 |
上記のうち、圧縮空気での主要な汚染物質はJIS規格で①固体粒子、②水分、③オイルとされ、その含有量ごとに等級が決められています。
④ガス状汚染物質、⑤微生物は、圧縮空気の規格で等級の規定がありません(測定方法の記載はあります)。
圧縮しただけの空気は思いのほか汚れている。
空気は圧縮により体積は小さくなりますが、その過程で発生した汚染物質や、元々圧縮前の空気に含まれていた汚染物質はそのまま残ります。
⇒実際にオイルフリータイプの圧縮空気の品質をコンプレッサの出口で測ってみると、、、
測定項目 | 測定値 | ||
---|---|---|---|
清浄度 | 0.5μm | 3,340,000 | 個/m3 |
1μm | 183,000 | 個/m3 | |
露点温度 | -1.8 | ℃DP | |
オイル | 0.3 | mg/m3 |
コンプレッサ(オイルフリータイプ)
型式:PAH3020VE
メーカ:日立産機システム
→上記データの詳細はコチラ(No.114 圧縮空気の品質(オイルフリータイプのコンプレッサー))
→上記に関連するメルマガはコチラ(メルマガ第152号 圧縮空気の品質はどれぐらいのデータになる?)
給油式のコンプレッサは圧縮空気に油が混入する。
圧縮器内部の潤滑やシールにオイルを用いているため、圧縮空気中にオイルが混じってしまいます。
⇒実際に圧縮空気の品質をコンプレッサの出口で測ってみると、、、
測定項目 | 測定値 | ||
---|---|---|---|
清浄度 | 0.5μm | 21,400,000 | 個/m3 |
1μm | 1,930,000 | 個/m3 | |
露点温度 | 8.3 | ℃DP | |
オイル | 3.0 | mg/m3 |
コンプレッサ(油潤滑タイプ)
型式:0.4P-7S 60Hz(ベビコン)
メーカ:日立
→上記データの詳細はコチラ(No.115 圧縮空気の品質(油循環タイプのコンプレッサー))
→上記に関連するメルマガはコチラ(メルマガ第153号 圧縮空気の品質はどれぐらいのデータになる?(その2))
一般的なフィルタでは、油分・水分はあまり変化しない
微粒子は約1/3000になりましたが、露点温度、オイルは目立って変化しませんでした。
⇒実際にフィルタを付けて測ってみると、、、
→上記データの詳細はコチラ(No.116 圧縮空気の品質(フィルター装着の効果))
→上記に関連するメルマガはコチラ(メルマガ第154号 圧縮空気の品質はどれぐらいのデータになる?(その3))
配管の材質によって圧縮空気の品質に影響がでる
乾燥した(露点温度の低い)圧縮空気の配管に樹脂製のものを用いると、露点温度に影響します。
⇒実際にステンレス製(SUS316)と樹脂製の配管を付替えて測ってみると、、、
測定項目 | 材質 | 長さ /外径 | 露点温度 | 露点温度 | 金属(SUS316) | 1m /Φ6 | -68.3℃DP |
---|---|---|---|
樹脂(ウレタン) | 1m /Φ6 | -47.3℃DP |
→上記データの詳細はコチラ(No.140 露点温度測定時の配管材質による測定値の違い)
→上記に関連するメルマガはコチラ(メルマガ 第178号 測定用の接続配管による露点温度の違い!)
上記のような圧縮空気の品質に関連する実験データ以外にも、バリデーション・適格性評価に関する様々な情報をメールマガジンで毎週木曜日に発信しています!
3.圧縮空気(エアー)の品質(適格性評価・測定)の項目例
圧縮空気(エアー)の品質に関係する汚染物質としては、JIS規格/ISO規格※に微粒子、油分、水分(露点温度)の3つが示されています。そのため、実際の使用用途に適しているか判断するため、これらを測定します。
※JISB8392/ISO8573
測定項目 | 目的・使用時の規格・基準(例) | 当社での測定方法 |
---|---|---|
清浄度測定 |
目的 圧縮空気中に含まれる固体粒子含有量の管理 期待される結果: ISO/JIS規格※で粒子の大きさや、1m3あたりの数により等級(クラス)が決められている。 |
パーティクルカウンタを使用して測定 |
露点温度測定 |
目的 圧縮空気中の露点温度の管理 期待される結果: ISO/JIS規格※で水分・湿度の等級(クラス)が決められている。 |
露点計を使用して測定 |
油分測定 |
目的 圧縮空気中の油分量の管理 期待される結果: ISO/JIS規格※で油分量の等級(クラス)が決められている。 |
油分検知管を使用して測定 (JISではガスクロマトグラフによる測定) |
※ISO8573 / JISB8392
「圧縮空気(エアー)の品質測定」についての
当社の対応範囲(測定能力)はコチラをご覧ください。
4.圧縮空気(エアー)の品質に関連する規格の情報
圧縮空気(エアー)の品質(汚染物質の定義及び等級を表す際の基準)に関連して、以下の規格があります。
ISO8573-1:Compressed air - Part1 Contaminants and Purity Classes
JISB8392-1:圧縮空気-第1部 汚染物質及び清浄等級
(JIS規格は、ISO8573-1を元に作成されています)
圧縮空気の品質については、ISO/JIS規格で以下のように測定項目ごとの等級(クラス)が示されています。
清浄度測定
■固体粒子の等級(個/m3)
等級 | 粒径d(μm):個/m3 | ||
---|---|---|---|
0.10<d≦0.5 | 0.5<d≦1 | 1<d≦5 | |
0 | 等級1より厳しい条件で使用者 又は納入業者によって決定する。 |
||
1 | 20,000 | 400 | 10 |
2 | 400,000 | 6,000 | 100 |
3 | - | 90,000 | 1,000 |
4 | - | - | 10,000 |
5 | - | - | 100,000 |
等級 | 濃度 mg/m3 | ||
6 | 0 < Cp ≦ 5 | ||
7 | 5 < Cp ≦ 10 | ||
X | 10 < Cp |
参照規格:
ISO8573-1:2010
JISB8392-1:2012
Cp:サンプル空気中の固体粒子濃度
露点温度測定
■湿度/水分の等級(℃)
等級 | 圧力露点 ℃ |
等級 | 圧力露点 ℃ |
---|---|---|---|
0 | 等級1より厳しい条件で使用者 又は納入業者によって決定する。 |
7 | Cw≦0.5 |
8 | 0.5<Cw≦5 | ||
9 | 5<Cw≦10 | ||
1 | ≦-70 | X | 10<Cw |
2 | ≦-40 | ||
3 | ≦-20 | ||
4 | ≦+3 | ||
5 | ≦+7 | ||
6 | ≦+10 |
参照規格:
ISO8573-1:2010
JISB8392-1:2012
- “圧力露点”は、実際の圧力下で測定した露点。
油分測定
■油分濃度の等級(mg/m3)
等級 | オイル総濃度 mg/m3 |
---|---|
0 | 等級1より厳しい条件で使用者 又は納入業者によって決定する。 |
1 | ≦0.01 |
2 | ≦0.1 |
3 | ≦1 |
4 | ≦5 |
X | 5< |
参照規格:
ISO8573-1:2010
JISB8392-1:2012
上記のISO/JISの規格値が、以前はどうたったのか?ということで、参考まで旧規格値を以下に示します。
(旧規格)清浄度測定
■固体粒子の等級(個/m3)
等級 | 粒径d(μm):個/m3 | 粒径 μm |
濃度 mg/m3 |
|||
---|---|---|---|---|---|---|
≦0.10 | 0.10<d≦0.5 | 0.5<d≦1 | 1<d≦5 | |||
0 | 等級1より厳しい条件で使用者 又は納入業者によって決定する。 |
- | - | |||
1 | - | 100 | 1 | 0 | ||
2 | - | 100,000 | 1,000 | 10 | ||
3 | - | - | 10,000 | 500 | ||
4 | - | - | - | 1,000 | ||
5 | - | - | - | 20,000 | ||
6 | 適用外 | ≦5 | ≦5 | |||
7 | 適用外 | ≦40 | ≦10 |
参照規格:
ISO8573-1:2001
JISB8392-1:2003
現行規格との主な違い
- 判定基準が桁違いに厳しい。(旧規格は許容される濃度が数十~数百倍少ない)
- 対象粒径に0.10μm以下の規定がある。
- クラスXがない
(旧規格)露点温度測定
■湿度/水分の等級(℃)
等級 | 圧力露点 ℃ |
等級 | 圧力露点 ℃ |
---|---|---|---|
0 | 等級1より厳しい条件で使用者 又は納入業者によって決定する。 |
7 | Cw≦0.5 |
8 | 0.5<Cw≦5 | ||
9 | 5<Cw≦10 | ||
1 | ≦-70 | ||
2 | ≦-40 | ||
3 | ≦-20 | ||
4 | ≦+3 | ||
5 | ≦+7 | ||
6 | ≦+10 |
参照規格:
ISO8573-1:2001
JISB8392-1:2003
現行規格との主な違い
- “圧力露点”は絶対圧0.8MPaにおける値。(現行規格は実際の圧力下での値。)
- クラスXがない
(旧規格)油分測定
■油分濃度の等級(mg/m3)
等級 | オイル総濃度 mg/m3 |
---|---|
0 | 等級1より厳しい条件で使用者 又は納入業者によって決定する。 |
1 | ≦0.01 |
2 | ≦0.1 |
3 | ≦1 |
4 | ≦5 |
参照規格:
ISO8573-1:2001
JISB8392-1:2003
現行規格との主な違い
- クラスXがない