乾燥器の評価 お客様のバリデーションに現場作業で関わる当社ならではの情報を交えてお届けします。
このページでは、製造工程中での中間製品や、最終製品の乾燥など様々な場面で利用されている乾燥器について、乾燥器に関する設備の稼動原理から、適格性評価の実態・実験データ、関連規格など、適格性評価業務としてお客様のバリデーションに現場作業で関わる当社ならではの情報を交えてお届けします。
1.乾燥を実現している機器の構成(仕組み)
“乾燥”は、乾燥対象物から水分などを除去することです。
その方法として、加熱、減圧などの方法があり、ここでは加熱による乾燥の「棚式乾燥」について記載します。
乾燥を実現するための要素は設備規模や用途により様々ですが、一例を以下に示します。
■乾燥器 (棚式・熱風乾燥)
各要素の働きと機能
機器名 | 働き・機能 |
---|---|
①温度計(外気) | 外気の温度を測定する |
②温度計(給気) | 乾燥室に入る空気の温度を測定する |
③温度計(排気) | 乾燥室から出る空気の温度を測定する |
④温度計(過昇温防止) | ヒータの異常な高温を検知する(安全対策) |
⑤給気フィルタ | 乾燥室に入る空気の塵埃を捕集し、清浄にする |
⑥排気フィルタ | 乾燥時、飛散する粉末などを捕集し、ダクト内を清浄に保つ |
⑦除湿クーラー | 外気の水分の除去して乾燥させる |
⑧ヒータ | 乾燥に必要な熱量を空気に与える |
⑨ファン(送風) | 乾燥室に空気を押し込む |
⑩ファン(排気) | 乾燥室から空気を排出する |
⑪乾燥室 | 乾燥する対象物を収納する |
各ダンパ | 風量・給排気のバランスを調整する |
2.乾燥器の評価の実態(適格性評価・測定の必要性)
乾燥器は、医薬品製造・食品製造等の様々な乾燥用途で用いられています。
製品の乾燥状態は、入れた(置いた)場所の温度、風速などの影響を受けます。
乾燥器を選ぶ場面では、用途に適した容量や設定可能な温度、風量などの能力などが考慮されますが、実際に使う設定温度・時間での温度推移や、製品を入れる(置く)場所がどんな温度になるかは分かりません。
⇒こんな時には、乾燥器で実際に使う設定値での温度推移や、製品を置く場所が、想定した温度になっているかの確認が有効です。
乾燥器内の場所によって温度が違う?
- 熱風が循環するタイプの乾燥機では、庫内の気流や温度分布は一様な気がしますが実際に測定してみると、、、? → 扉側・下側の温度が他と比べてやや低い結果に。
さらに設定温度を上げてみると、、、 → 各位置の温度差が広がる結果に。
設定の変更で結果が変わることは想像できますが、どの程度かは中々分かりません。
だからこそ、『実際に使う設定で測定』して、適格性を評価することが重要になってくると考えます。
→上記に関連する実験データはコチラ(No.47 熱風乾燥器の温度分布の状況)
→上記に関連するメルマガはコチラ(65号 [乾燥シリーズ]乾燥器内の場所によって温度が違う?!)
上記のような乾燥器、温度分布に関連する実験データ以外にも、バリデーション・適格性評価に関する様々な情報をメールマガジンで毎週木曜日に発信しています!
3.乾燥器の評価(適格性評価・測定)の項目例
乾燥器の使用条件(製造条件)に関係する項目として、給気温度や給気風量などがあります。
しかし上記項目だけでは、実際の設定値(温度・時間)での、各場所の温度分布や、庫内吹出し部の風速状態などが分かりません。
実際の用途に適しているか判断していただくため、当社ではお客様のニーズに合わせてこれらの項目も測定・算出しお客様のバリデーション・適格性評価を支援しています。
評価項目の例 | 目的・使用時の規格・基準(例) | 当社での測定方法 |
---|---|---|
温度変動 温度変動幅 |
目的 時間的な温度変化(変動)の状態を確認 期待される結果: 機器の仕様を満たすこと |
温度記録計を使用して測定 |
温度勾配 空間温度偏差 温度分布 |
目的 空間的な温度分布(ばらつき)の状態を確認 期待される結果: 機器の仕様を満たすこと |
|
温度平均値 (最大・最小) |
目的 乾燥時間中の空間的な温度分布 (ばらつき)の状態の確認 期待される結果: 適用規格の規格要求値を満たすこと 使用上の上下限値を満たすこと など |
|
温度瞬時値 (最大・最小) |
目的 時間的な温度の推移(ふらつき)の状態の確認 期待される結果: 適用規格の規格要求値を満たすこと 使用上の上下限値を満たすこと など |
|
風速 (平均) (空間偏差) |
目的 吹出し面での風速の確認 平均及び平均からのバラつきを確認 期待される結果: 使用上の上下限値を満たすこと など |
風速計を使用して測定 |
「乾燥器の評価測定」についての当社の対応範囲(測定能力)は以下をご覧ください。
4.乾燥器の評価に関連する規格の情報
温度の評価項目を算出する方法としては、以下の規格を参照しています。
JTM K01
恒温恒湿槽-性能試験方法及び性能表示方法(1998)
JTM K05
高温恒温槽-性能試験方法及び性能表示方法(2000)
JTM K07
温度試験槽-性能試験方法及び性能表示方法(2007)
※JTM…日本試験機工業会 JTM Kシリーズ…温度試験槽の性能表示に関する規格群
JTM K01/K03/K05規格は現在廃止となっていますが、使用してはならないものではなく、今までの装置管理の状況を考慮して、使用者の判断で運用してもよいとされています。
上記のJTM規格の対象や範囲を表にすると以下のようになります
■JTM規格
上記の各規格の制定・移り変わりを年表にすると以下のようになります