No.56 熱電対(温度センサー)の誤った工事により誤差が出るケース
[輸入装置の工事で起きたケース]
輸入装置のT熱電対(温度センサー)と計器の間を、センサーと同じ色(青色)の
配線で接続したところ、大きめの誤差が出た。
⇒ 状況を再現して、どのような誤差が出てくるのか測定してみました。
1. 測定の方法
1.1 測定に用いた温度計
・型式 : SDC26 (山武製)
・測定レンジ : T熱電対入力
-199.9~400.0℃
1.2 測定方法
測定は以下の方法にて実施しました。
①温度を模擬出力する装置を、補償導線を介して温度計に接続する。
②補償導線との接続部を0℃にする。
③検査点の温度に応じて装置を操作し、指示値を読み取る。
※温度センサ(T熱電対)の出力を模擬的に発生させる
④補償導線との接続部を50℃にして、同様に測定する。
・センサ由来の誤差を排除するため、模擬信号による検査としました。
・現場環境を想定し、センサと補償導線との接続部の温度を[0℃/50℃]にして
測定しました。
【検査点】 -200/-100/0/100/200/300/400℃
※T熱電対の各温度に対応する信号を入力する。
1.3 測定のイメージ
2.測定した結果
2.1 測定温度に対する表示温度の誤差グラフ
上のグラフでは、接続部の温度により、誤差がプラスにもマイナスにも出ることが
分かります。これではとても使用できません。
3.誤差が出る原因は『センサと補償導線のミスマッチ』
熱電対の温度センサ、補償導線は、種類によって被覆の色が定められています。
基本的にはセンサと補償導線は同じ色を使えばOKです。
しかし、今回は同じ青色のセンサ、補償導線でしたが大きな誤差が出ました。
これは規格ごとに種類と被覆の色の対応が異なることに起因します。
今回の場合では、
青いセンサ : T熱電対(米国規格)
青い補償導線 : K熱電対(JIS規格)
で、同じ青色でも種類が異なるものであったことが原因でした。
3.1 各種規格で異なるセンサ、補償導線の被覆の色
日本とアメリカの規格を比較すると以下のようになります。
上の図で分かるように、
・JISでは赤が+、米国では赤が-
・JISでも色が異なる2つの区分がある
などの色や種類の違いがあります。
被覆の色だけみて早合点せずに、対象がどの規格のものかを
知っておく必要があります。
参考までに、実際の熱電対補償導線を以下に示します。
T熱電対の補償導線(JIS C1610 区分1)
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