再生医療・CPCにおけるバリデーション実務のサポート
再生医療等製品とバリデーション
厚生労働省が平成26年8月に発出した『再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(GCTP省令)』では、製造業者等に対しバリデーション等を行うことを要求しています。
この基準の第2条5では
「バリデーション」は、製造所の構造設備並びに手順、工程その他製品管理及び品質管理の方法が期待される結果を与えることを検証し(又は与えたことを確認し)、これを文書化することをいうと定義されています。
では、どんな場合に実施したら良いか規格要求を見てみます。
再生医療等製品製造で求められているバリデーション等で実施すること
GCTP省令をもう少し詳しく見てみると、下記のように書かれています。
(バリデーション又はベリフィケーション)
第14条
製造業者等は、あらかじめ指定した者に、手順書等に基づき、次に揚げる業務を行わせなければならない。
- 一 次にあげる場合においてバリデーションを行うこと。ただし、やむを得ない場合によりバリデーションを行うことができない場合には、ベリフィケーションを行うこと。
- イ 当該製造所において新たに製品の製造を開始する場合
- ロ 製造手順書等に製品の品質に大きな影響を及ぼす変更がある場合
- ハ その他製品の製造管理及び品質管理を適切に行うために必要と認められる場合
しかし、バリデーションに関して、これ以上のことは書かれておりませんでした。
第2条と第14条を読んで、理解して、実際の現場で具体的にどうしたら良いのか分かりづらいですね。
現場でバリデーションを実施するには、規格の要求を読み解くことが重要です
実際の現場で規格の要求を間違いなく実現するにはどうすればよいのでしょうか?
それは、それぞれの規格要求を読み解き実施レベルまで落とし込む必要があります。
第14条イロハの場合にバリデーションを実施しなければならないことは分かりましたが、実施要件は示されておりません。
規格が求めるバリデーションを、現場で何をどのように実施するのか…
規格要求の読み解きが重要になります。
GCTP省令2条及び14条の読み解き
GCTPのバリデーション定義に戻ってみます。
この定義は、医薬品製造者様には見覚えのある“あれ”と同じです。
“あれ”とは『医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準(GMP省令)』のバリデーション基準になります。
GMPではバリデーションを行う目的を、下記のように設定しております。
バリデーションの目的
「バリデーションは、製造所の構造設備びに手順、工程その他製造管理及び品質管理の方法が期待される結果を与えることを検証し、これを文書化することによって、目的とする品質に適合する製品を恒常的に製造できるようにすることを目的とする」
…ということは、GCTPで行わなければならないバリデーションの目的も「目的とする品質に適合する製品を恒常的に製造できるようにすること」です。同じですね。
同目的のGMPバリデーション基準には、バリデーションを実施する際の基本的な用件が規定されておりますのでこれに順ずると、GCTPの14条のイロハは、
- イ=「プロセスバリデーション(予測的バリデーション)」
- ロ=「変更時のバリデーション」
- ハ=「再バリデーション」
の実施をすれば良いということになります。
また、プロセスバリデーションは開始前に、バリデーションに用いる設備、システム又は装置の適格性評価が適切に完了していなければなりませんので、下記のニが実施済であることが前提条件となります。
ニ 適格性評価
1.設計時適格性評価(DQ)
2.設備据付度適格性評価(IQ)
3.運転時適格性評価(OQ)
4.性能適格性評価(PQ)
よって、再生医療等製品製造の現場では、この目的を確実に達成するためにイロハニを実施する必要があると読み解くことができます。
ところで、第14条には、「“やむを得ない理由”によりバリデーションを行う事が出来ない場合には、にはベリフィケーションを行うこと」と書かれておりますが、やむを得ない理由が気になりましたので、関連文書をもう少し調べてみました。
麻薬対策課監視指導:『再生医療製品の製造管理及び品質管理の基準等に関する質疑応答(その2),(その3)』に4つの場合が示されておりました。
- ①倫理上の理由による検体の量的制限がある場合
- ②変動要因が特定されていない場合
- ③許容限界が確定していない場合
- ④技術的限界等が存在する場合
更に、「量的制限が無い場合であっても、②~③はベリフィケーションを採用すること」、
「プロセスバリデーションとして評価ができるまでベリフィケーションを継続して実施する必要がある」
「定期的な製品品質の照査を実施し、報告書を年次報告として調査実施者に提出することがGCTP調査における指摘事項になる場合がある」
と書かれておりました。
少し話しは逸れますが、「照査」はGCTPの15条に規定があります。
(製品品質の照査)
第15条
一 製造工程の一貫性及び製品等の規格の妥当性について検査することを目的として、定期的に又は随時、製品の品質の照査を行うこと。
(中略)
3 製造業者等は、一の照査の結果に基づき、製造管理若しくは品質管理に関し改善が必要な場合又はバリデーション若しくはベリフィケーションを行う事が必要な場合においては、所要の措置を採るとともに、当該措置に関する記録を作成し、これを保管しなければならない。
話を元に戻します。これらから気づくことは、
再生医療等製品は工業化研究の結果や類似製品の製造実績が少ないため、製造工程等が未成熟であるが故にプロセスバリデーションによる事前検証ができないものが数多くある。その場合は、ベリフィケーションと照査を続けてプロセスバリデーションとして評価できるようにしなさい。
ということです。
見方を変えると、製造工程等が原因でバリデートが途上であるならば、ベリフィケーション作業と照査の妥当性を確保するためには、その他の部分正しさをきちんと確認されていることが必須であり、特に設備・装置がバリデートされているか定期的に再確認する必要があると考えられます。
すなわち、ベリフィケーションの実施を採用するならば、設備・装置・機器の再バリデーション(適格性評価)は定期的、または必要に応じて随時実施する必要があると読み解くことができます。
<参考>
GMPバリデーション基準の「再バリデーション」
実施対象となる設備、システム、装置、製造工程及び洗浄作業において、バリデートされた状態が維持されていることを定期的に再確認するために適格性評価、プロセスバリデーション及び洗浄バリデーション等を実施し、引き続き目的とする品質に適合する製品を恒常的に製造するために妥当であることを検証することをいう。
しかし、この読み解きによって、現場で何をどの様に実施していくかがはっきりしてきても、実際に実施しようとすると様々な課題が生ずることが多くて悩みに尽きないと考えます。
再生医療等製品の製造現場でのバリデーションの実務には多くの悩み事があります
再生医療等製品製造の現場でバリデーションを実際に実施する時には多くの悩みごとがあると想像できます。
GCTPが要求するバリデーション・校正作業の具体的な方法が分からない
規格には、「手順書等に基づき」、「文書化する」、「計器の校正を適切に行う」、「その他製品の製造管理及び品質管理を適切に行うために必要と認められる場合」などと書かれてはいるものの、具体的に現場で進めようとすると何をどのように実施したら良いか分からない---という悩みごとがありませんか?
対象機器が適確に選定できない
再生医療等製品を製造する設備・装置は「冷凍庫」、「遠心機」、「クリーンベンチ」、「CO2インキュベータ」など多種多様です。規格の要求に過不足なくバリデーション等の実施をしたいので、対象と必要項目を絞り込みたいが、多くの知識や経験が要りそうで・・・
アドバイスが欲しい---という悩みごとがありませんか?
委託元監査で指摘を受けたがどうしたら良いか分からない
バリデーションを内製化しているが、予想外にやることが多くて確実に実施しているつもりなのに指摘を受けた。限られた人材で実施しているので、仕事の偏りや残業時間の増加などが発生してしまっている状態で、新たに採用したとても育成するのはなかなか難しい---という悩みごとはありませんか?
装置メーカー等任せのバリデーション内容で、それで良いのか不満や不安がある
バリデーションを外部に任せきりにしているが、自社の使用内容に見合っているのかコスト面での不満や、メーカー毎(や依頼先毎)に内容が異なっていて管理面での不安があるが、知識不足ゆえになおざりにしてしまっている---という悩みごとがありませんか?
現場でバリデーションを担当する当社にも、このような様々な悩み事の相談を受けることがありますので
これらの悩み事はどのような原因や背景で発生しているか考えてみました。
バリデーション実務での悩み事の原因
会社それぞれに環境や状況は当然違いますが、これらの悩み事が生じる原因を想定すると
バリデーション実務の知識不足
医薬品製造で現場視点でのバリデーションの実務知識をを知りたいと思っても、適当な教育機関や教育本もないのが現状だと思います。
バリデーションの作業に関しての技術不足
バリデーション作業に必要な技術は、電気・物理や計装など結構多くの技術が必要で全ての技術を習得することが難しい
人材不足
医薬品を製造するにはバリデーションが必要だが、直接、生産する作業でないため、最低限の人材でしか確保できない。
が主な原因てないかと考えます。
まとめ:再生医療等製品製造における悩み事(関心事)と原因(背景)
再生医療等製品製造における悩み事(関心事)と原因(背景)のまとめ
悩み事(関心事) | 原因(背景) |
---|---|
GCTPが要求するバリデーション・校正作業の具体的な方法が分からない | <知識不足> 知識・情報の得方がわからない |
対象機器が適確に選定できない | <知識不足><技術不足><人材不足> 本業で無いため専任させれない |
委託元監査で指摘を受けたがどうしたら良いか分からない | <知識不足><人材不足> 人材を育成できない |
装置メーカー等任せのバリデーション内容で、それで良いのか不安がある | <知識不足><技術不足> 専門業者が探せない |
提案:悩み事解決策
これらの悩みごとを現場に寄り添ってきたから当社だから提案できる解決策があります。
解決策はバリデーション実務の「外部委託」をお勧めしますので、原因解決のために
外部委託を検討されてはいかがでしょうか。
ただし、バリデーション実務の結果が第三者を納得させられるかが重要になります。