第267号 現場からのご質問の解決策を(一緒に)考えてみます。(5)
タイムリーなお問い合わせを頂きました。
- 今回は、細胞を採取培養して、治療に役立てるメディカル業界の方から「再生医療法における細胞培養設備・装置のバリデーションは、どんなことをしたら良いのか?」というお問い合わせを頂きました。
- そこで、今回は、業界をにぎわしているこの話題について考えてみます。
まず、「再生医療法」について調べてみました。
- この再生医療法は、去年の国会で、再生医療等の安全性の確保等に関する法律が制定され平成25年11月27日に公布、今年、平成26年11月25日に施行予定の法律です。
□この法律の概要としては
- 国民が再生医療を迅速かつ安全に受けられるよう、国が研究開発などに関する基本方針を定めています。
- 再生医療に関する施策を進める際には、患者の安全確保や生命倫理について有識者や医療関係者らの意見を聞きながら国民の理解を得るとしている。
- 研究開発を促進するため、財政や税制の面で支援を行うほか、再生医療に関する製品が早期に承認されるよう、必要な施策を講じるなどとしている。
- なるほど、最近ニュースになっていたiPS細胞を使って目の難病患者の手術したことに関連するような法律なんだ。
「再生医療法」における細胞培養に使用される設備・装置はどんなものかも調べました。
再生医療の周辺産業の市場拡大レポートによると、使用される設備・装置は
- 空調設備等の構造設備
- インキュベータ、培養装置等の細胞の調整、加工に利用する細胞培養機器
- 画像解析装置等の細胞評価機器
- ポータブル保温器等の細胞輸送機器
などが該当するものと思われます。
まだ、設備・装置のバリデーション内容の規格要求は確認できません。
- この法律では、第42条で細胞培養加工施設の構造設備は、厚生労働省で定める基準に適合したものでなければならない。と決まっていますが、現時点では「細胞培養加工施設の構造設備基準(案)」の発行に留まっています。
- このような状況で、バリデーションは具体的にこのように しなさいという決め事がないと言うところが現状と思われます。
※ では、このお問い合わせの解決策としてはどうするのか考えてみます。
(現時点では)準拠できそうな規格で解決策としたらどうでしょうか。
- 準拠できそうな規格としては(現時点では)製薬工場の設備や装置に求められるGMPのバリデーション基準を使うのが良いと考えます。
□ そこで、今回のお問い合わせは、
- 細胞培養に使用される設備・装置の中から、代表的なインキュベータを取り上げて、バリデーション基準に基づいて、具体的に何を実施するかを考えます。
インキュベータのバリデーションの実施内容を考えてみます。
- ここでは、培養に使用する温度を一定に保つ機能を有するインキュベータを例にしてバリデーション基準では具体的に何を実施するか考えます。
- 必要なインキュベータをカタログ等から設定した理由を明確にします。
(これは、設計時適格性評価(DQ)と呼ばれています。) - インキュベータを据え付けた時に、電源等のユーティリティやメンテナンススペース等が要求通りになっているか確認します。
(これは、設備据付時適格性評価(IQ)と呼ばれています。) - インキュベータの本体に付いている温度計等が正しいことを標準器を使って確認します。
(これは、校正(キャリブレーション)と呼ばれています。) - インキュベータの仕様書に記載されている仕様通りに動作することを確認します
(これは、運転時適格性評価(OQ)と呼ばれています。) - インキュベータの使用条件で期待している通りに動作することを確認します。
(これは、性能時適格性評価(PQ)と呼ばれています。)
- このように1.~5.のバリデーション実施項目毎に、バリデーション実施計画書をつくりその計画書通りに作業を行い、ドキュメントを作成します。
- 準拠するバリデーション基準では、このような作業を、バリデーション対象の全ての設備に実施することが必要になってきます。
次回も、シリーズ最終のご質問の解決策を考えてみます。
- 次回は、査察時に、何故実施したバリデーションが適格と考えたのかと聞かれたが的確に応えられなかったので、その対応の仕方を知りたい。について考えてみます。
■当社は
フィールドでバリデーションを実施する立場から、規格の要求内容や定義を具現化(具体化)して、お客様に満足して頂ける作業をお届けする努力を続けています。