第268号 現場からのご質問の解決策を(一緒に)考えてみます。(6)
当社としては解決案を出すことが難しいお問い合わせを頂きました。
>> ある製薬会社さんから
- 当局査察時に、何故実施したバリデーションが適格と考えたのかと聞かれて困ったことがある。どのように準備、対応すれば良いか知りたい。
というお問い合わせです。
- 当社は、バリデーションの支援を行っている会社で当局の査察を受けたこともないため、査察の雰囲気も分かりませんが、現場でバリデーションをご支援している当社の立場から考えてみました。
まず、解決案の糸口を考えました。
>> このお問い合わせをどのように考えていって良いか結構悩みました。
- 当社でも、お客様(製薬会社など)の監査やISO9001の審査を受けるときには監査・審査者の取り決め等に基づいて審査が行われますので、当局査察も、何らかの法律に従って進められると考えました。
- 今回は製薬関連の企業様ですので、設備・装置のバリデーションに関わる法律である「GMPのバリデーション基準」通りになっていることが重要と考えられます。
※この様に考えて、「GMPのバリデーション基準」を読み解いて解決案を求めていくことにしました。
「適格かどうかは、バリデーションの目的を達成していること」と考えます。
GMPのバリデーション基準に記載されているバリデーションの目的をみると
『バリデーションは、製造所の構造設備並びに手順、工程その他の製造管理及び品質管理の方法(以下のこの基準において「製造手順等」という)が期待される結果を与えることを検証し、これを文書とすることによって、目的とする品質に適合する製品を恒常的に製造できるようにすることを目的とする。・・・』
となっていますので、
- この目的に記される設備・装置が期待される結果を与えていることを検証し、文書化されておれば実施したバリデーションは適格であったと言える
と考えました。
滅菌器を例にして、検証の進め方を具体的に考えてみます。
- バリデーション基準で要求される設備・装置のバリデーションは、滅菌器に求める機能が実現されていることを検証することと読み解くことができます。
□ まず、滅菌器に求める機能としては
「定められた温度で、定められた時間維持できること」になります。
□ そのため、滅菌器のバリデーションは
- 最初に、滅菌器が、所定の温度と時間が維持できるように、設計されていることを関連図書で確認します。
(この作業は、バリデーション基準では設計時適格性評価:DQと呼ばれています。 - 次に、滅菌器が施工図などの設計図書通りに、現場に据え付けられていることを確認します。
(この作業は、設備据付時適格性評価:IQと呼ばれています。 - 最後に、定められた温度・時間の測定によって、その機能が実現されていることを確認することになります。
(この作業は、運転時適格性評価:OQ、性能適格性評価:PQと呼ばれています。
但し、それぞれの確認作業は承認されたバリデーション作業の実施計画書通りに実施し、作業結果の記録を残しておきます。
■ こうすることで、
目的とする品質に適合する製品を恒常的に製造できるようになり、実施した設備・装置のバリデーションが適格であったと言えると考えます。
※即ち、
GMPのバリデーション基準に定められる要求に沿って、設備・装置のバリデーションを実施することが重要なポイントになると考えます。
現場で遭遇した悩み、困りごとを頂きましたらご紹介します。
6回にわたりご紹介しました皆様からのお問い合わせは一端区切りとします。
また、皆様の参考になりそうなお問い合わせがありましたらご紹介したいと思います。
次回は、お問い合わせにもあった先端医療に関わる細胞輸送用ポータブル保温器を取り上げます。
■当社は
フィールドでバリデーションを実施する立場から、規格の要求内容や定義を具現化(具体化)して、お客様に満足して頂ける作業をお届けする努力を続けています。