第269号 細胞輸送用ポータブル保温器の庫内の温度変化を測定しました。
細胞輸送に使われるポータブル保温器を取り上げました。
>> 皆さんもご存知のように
再生医療はアベノミクスの成長戦略において、国が法整備・規制
緩和により、国際競争力のある新産業として育成を図っていく
ひとつで
来週の火曜日(11月25日)には、再生医療等の安全性の確保等に関する
法律が施行されることになっています。
□ この再生医療は大きく分けると「病院」と「培養施設・設備」をまたぐ
7つのプロセスになっています。
※ 今回は、このプロセスのうち、「病院」と「培養施設・設備」の間の
細胞の輸送②⑥に使われると想定するポータブル保温器の温度変化に
ついて調べてみました。
実験に使ったポータブル保温器をご紹介します。
>> 輸送する細胞の種類や用途によって、様々な種類のポータブル保温器が
使用されているようですが
今回の実験に使った保温器は(右写真)
・保温温度は、5~60℃の範囲で設定できます。
・商用電源(100V)とバッテリー電源(12V)を
併用できるもので、屋内では100V、移動時は
バッテリーといった使い方ができます。
・保管できる有効容積は25Lと広めです。
・重さは、7.5Kgと少し重めのものです。
今回は、こんな方法でポータブル保温器の温度を測定します。
>> 器内に何も入れない無負荷状態で、次のように温度を測定します。
1.庫内 11ヶ所(上段:5ヶ所、中央:1ヶ所、下段:5ヶ所)
に温度センサを取り付ける
2.ポータブル保温器の前面パネルのデジタル温度表示を”38℃”に設定する
3.データ収集用PCで温度データを収集する。
[使用測定器の仕様]
・データ収集装置
メーカ : 横河電機
型式 : DA100
・温度センサ
①~⑪: テフロン被覆T熱電対 クラス1
※ この測定方法で
実験1:電源を入れた器内の温度安定性能
実験2:電源がなくなった時の温度低下の状態
を確認します。
2つの実験で、ポータブル保温器内の温度特性がハッキリ分かりました。
>> この実験結果のデータとグラフです。
[実験1]:電源を入れた器内の温度安定性能確認
測定の仕方:
庫内が安定した状態で各点の温度を1分おきに30分間測定を行い、
平均温度、最高温度、最低温度を求めました。
また、表中の温度差は最高温度と最低温度との差になります。
[実験2]:電源がなくなった時の温度低下の状態確認
測定の仕方:
安定した状態で、ポータブル保温器の電源を切り、3分・5分・10分後の
温度を測定しました。
また、電源断時の温度から3分・5分・10分で低下した温度を記載しました。
■ 実験結果から
□(実験1:電源を入れた器内の温度安定性能確認)
・温度設定は38℃であるが、最高温度:39.4℃、最低温度:35.7℃と
その差は3.7℃にもなった。
・約3℃ぐらいの振幅で、温度が上がったり、下がったりする。
・約10分間隔で、上下動を繰り返す。
□(実験2:電源喪失時の温度低下の状態確認)
・どの場所も、同じ傾向で温度が低下する。
・3分で約1℃、5分で約2℃、10分で約3℃低下しました。
※ 但し、上記の実験は、あくまで一例で、種々の条件により計測値は
異なります。
ポータブル保温器の温度特性を知っていることがベストと思います。
>> 輸送する細胞の種類や用途によって、保温に必要とされる温度や条件は
様々だと思います。また、使用されるポータブル保温器の特性も様々だと
思います。
□ 今回のポータブル保温器では、こんなデータになりましたので(3℃の温度
変化が許されるのであれば)電源がない状態で約10分間の移動が可能と
いうことも分かりました。
■ こんな感じで、使用条件に見合ったポータブル保温器であることを確認して
おくことが重要だと考えます。
※ 当社は、
この様な実験の方法や測定データ等のノウハウで、どんな環境に
おいても、お客様に満足して頂ける作業をお届けする努力を
続けています。