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第270号 細胞輸送用ポータブル保温器に保管した容器内の温度変化を測定しました。

今回は、ポータブル保温器を有負荷状態で測定します。

□引き続き、再生医療の細胞輸送に使用されるポータブル保温器の温度
 特性を調べます。
■今回の実験内容は
 ポータブル保温器内に製品に近い模擬的な保管物を入れて、
 [実験1](保管時や車での移動時)電源で保温することを想定しときの
       容器内の温度の安定性
 [実験2]人がポータブル保温器を持って移動したとき(電源がないとき)
      の容器内の温度低下の状態
 の2通りの実験をします。

保管物内部の温度モニタリングのやり方です。

□模擬的な保管物に温度センサをこんな風に取り付けました。
HP27001.jpg
※このように温度センサを取り付けた保管物を庫内11ヶ所に
 設置して実験します。

実験の測定方法です。

1.庫内11ヶ所(上段:5ヶ所、中央:1ヶ所、下段:5ヶ所)に
  保管物を設置します。
2.ポータブル保温器の前面パネルのデジタル温度表示を”38℃”に
  設定する
3.データ収集用PCで温度データを収集する。
HP27002.jpg
HP27003.jpg
[使用測定器の仕様]
 ・データ収集装置
  メーカ:横河電機
  型式:DA100
 ・温度センサ
  ①~⑪:テフロン被覆T熱電対クラス1

保管物を入れた状態(有負荷状態)でのポータブル保温器内の温度特性も分かりました。

>>この実験結果のデータとグラフです。
[実験1]:電源を入れた器内の温度安定性能確認
 測定の仕方:
 器内が安定した状態で各点の温度を1分おきに30分間測定を行い、
 平均温度、最高温度、最低温度を求めました。
 また、表中の温度差は最高温度と最低温度との差になります。
HP27010.jpg
HP27011.jpg
[実験2]:電源がなくなった時の温度低下の状態確認
 測定の仕方:
 安定した状態で、ポータブル保温器の電源を切り、3分・5分・10分後の
 温度を測定しました。
 また、電源断時の温度から3分・5分・10分で低下した温度を記載しました。
HP27020.jpg
HP27021.jpg
■実験結果から
□(実験1:電源を入れた時の容器内の温度安定性能確認)
 ・温度設定が38℃で、最高温度:37.8℃、最低温度:35.9℃と
  その差は0.7℃になった。
 ・約1℃ぐらいの振幅で、温度が上がったり、下がったりする。
 ・約10分間隔で、上下動を繰り返す。
□(実験2:電源喪失時の容器内の温度低下の状態確認)
 ・どの場所も、同じ傾向で温度が低下する。
 ・3分で約3.5℃、5分で約1.0℃、10分で約1.5℃低下しました。
※但し、上記の実験は、あくまで一例で、種々の条件により計測値は
 異なります。

無負荷時とのデータと比較してみます。

>>今回の有負荷状態のデータと前回の無負荷状態のデータを
  比較してみました。
HP27030.jpg
・温度の上下動の変動幅が、無負荷時の3.7℃から有負荷時の1.9℃と
 大幅に小さくなった
・周期は、約10分で変わらなかった
・電源がなくなった状態での3分毎の低下温度は、無負荷時の1℃から
 0.5℃と半減した
■今回の実験では、温度の安定性や電源喪失時の温度低下などの特性は
 製品を入れた有負荷の状態の方が大幅に向上することが分かりました。

今回と前回のメルマガで行った実験が、規格では「OQ」「PQ」と呼ばれています。

>>ポータブル保温器の性能を検証するバリデーションでは、規格
 (バリデーション基準)に沿って、特別な呼び方をしています。
・前回の実験のような無負荷の状態での測定は「OQ:運転時適格性評価」と
 呼ばれ
・今回の有負荷の状態での測定は「PQ:性能適格性評価」と呼ばれています。
■このように、バリデーションが必要な装置、機器には、規格に基づいた測定
 作業を実施することが重要だと考えます。
※当社は、
 この様な実験の方法や測定データ等のノウハウで、どんな環境に
 おいても、お客様に満足して頂ける作業をお届けする努力を続けています。