第271号 湿度校正用溶液(塩化リチウム溶液)を温かいままで保存する実験を行いました。
湿度校正用溶液を使った湿度計校正の注意点!
>> 製薬業界やビル空調など幅広く活用されている湿度計の現場での校正
方法のひとつに「湿度校正用溶液を使用する方法」が使われています。
□ この校正方法は
湿度の校正点が2点、3点の場合に使われ、塩化ナトリウムや
塩化リチウムなどの塩類の飽和水溶液を湿度の標準にして
湿度計を校正する方法です。
この方法は、他の湿度標準を使用する方法より、経済的で
運搬に便利ですが、湿度「11%RH」標準の塩化リチウムの
水溶液は「18℃以下」の温度にになると標準値が変化して
校正作業に使用できなくなるという問題があります。
そこで、今回の実験は、湿度校正用溶液(塩化リチウムなどの飽和
水溶液)を「18℃以下」にせず現場迄運搬する保存方法を考えて
実験してみます。
どうしたら寒いときに温度が下がらないかを考えました。
>> 湿度校正用溶液(塩化リチウムの飽和水溶液)を発泡スチロール
BOX①内に入れて、使い捨てカイロ②の発熱で、外気の温度が
下がっても湿度校正用溶液の温度が下がることを補おうと考えました。
①発泡スチロール:
幅:25cm 高さ:20cm 奥行き:20cm 厚み:1.8cmのもの
を選びました。(各寸法はおおよその数値です。)
②使い捨てカイロ:
大きさが13cm×9.5cmで持続時間が18h(40℃以上)の
ものを側面、底面に各2個の計4個を使います。
「保存方法の検証」:5℃の保冷庫に入れて、溶液が18℃以下にならないか調べました。
>> 湿度校正用溶液を入れた発泡スチロールBOXを5℃の保冷庫に入れて、
各点の温度をモニタリングしました。
[使用測定器の仕様]
データ収集装置
メーカ : 横河電機
型式 : DA100
温度センサ
①~③: テフロン被覆T熱電対 クラス1
>> この実験結果のグラフです。
■ 実験結果から
・保温容器を5℃の保冷庫に入れたときは、保温容器内の液温(湿度
校正用溶液)もカイロの温度も上昇したが
・30分ぐらいを経過すると、温度がどんどんと下がり、3時間ぐらい
で18℃を切ってしまった。
→これでは、溶液を造って現場まで運搬することを考えると、3時間
では現実的には使えません。
※ 但し、上記の実験は、あくまで一例で、種々の条件により計測値は
異なります。
このやり方は、大失敗に終わりました。
>> これらのデータから、今回の実験方法が失敗した原因としては、2つの
ことが考えられると思います。
1.このやり方は、カイロが空気中の酸素と反応して発熱し続ける
仕組みのため密閉された容器内では酸素が低下して、発熱が止まった
ものと考えられます。
2.保温対象のビーカーの容量が大きいため、カイロが発熱する
熱量では保温容器内の湿度校正用溶液の温度を上げることが
できなかったと考えられます。
※ 後から考えると、これらの原因は初歩的な問題で検討不足でありました。
やり方を考え直して、再実験を行います。
>> 次回は、以下の対策を行い、今回と同様の実験を行ってみます。
□ 原因1.については、
電池を使って発熱するネックウォーマーを使い、密閉された中でも
発熱できるようにする。
□ また、原因2.については、
小容量(100ml程度)のペットボトルを使うことにします。
※ 当社は、
この様な実験の方法や測定データ等のノウハウで、どんな環境に
おいても、お客様に満足して頂ける作業をお届けする努力を
続けています。