第296号 バイメタル式温度計の挿入長さによる誤差を調べました。
始めに、バイメタル式温度計をご紹介します。
バイメタル温度計は、温度による膨張係数の異なる2種の金属板を張り合わせたバイメタルを使用し、温度変化による変位を指針に伝え、指示させる温度計です。
このバイメタル温度計は、その構造が簡単で保守が容易、しかもガラス温度計に比べて堅牢であり、また指示を直読できるため、洗浄タンクや滅菌装置などの温度計として、多用されています。
- 今回の現場では、洗浄タンク内に挿入した感温筒の長さによって、指示した温度に違いが出ましたので、感温筒が8cmのバイメタル式温度計の挿入長さを変えて調べました。
挿入長が短すぎると正確に測定できない!
この実験の概要
- 恒温水槽を所定の温度で安定させる。
- 感温筒の長さ:8cmのバイメタル式温度計を所定の長さまで恒温水槽に挿入する。
- 標準温度計とバイメタル式温度計の指示値が安定したら双方の指示値を読み取る。
- バイメタル式温度計の感温筒の挿入長さを順次変えて指示値を読み取る。
[測定システムの概要]
[測定結果]
□ 測定結果から
・挿入長さが6cm以上になると標準温度計との差異が
「0.0℃」になる
・挿入長さが6cmより短くなると差異は大きくなる
※ 但し、上記の実験は、あくまで一例で、種々の条件により
計測値は異なります。
計測器の取り付けには注意が必要!!
実験結果から、今回のバイメタル式温度計であれば、挿入長を6cm以上にキチンと据え付ける必要があることが分かりました。
□ 一般的に、計測器を取り付けるときには、計測器単体が良い
もので、正しいものだったとしても、据え付け方が悪いと、
正しく温度が測定できないことになってしまいますので
■ 使用する計測器に見合った方法で正しく据付けなければ
なりません。
バリデーションでは計測器が正しく据え付いていることを確認します!
計測器が正しく据え付いていることを確認することを医薬品・医薬部外品GMP省令のバリデーション基準では設備据付時適格性評価(IQ:Installation Qualification)と呼ばれています。
因みに、IQは
設備、システム又は装置が、承認を受けた設計及び製造業者の
要求と整合することを確認し、文書化することをいう。
校正された計測器を使用すること
と定義されています。
※ 当社では、
このようなバリデーション基準が定める適格性評価
(IQ・校正・OQ・PQ)などをバリデーション支援業務として
お届けしています。