第314号 製薬設備等のバリデーションにおける「生データ」の重要性!
「生データ」とは、作業の中で、最初に文字化・数値化したもの!
「生データ」という言葉を分かり易くするために、まず、「生」という言葉を辞書で調べてみると「生きていること」「作為をほどこさず、自然のままであること」「純粋でまじりけがない」などと書かれています。
□生データの「生」の意味を、ここから選ぶとすれば、
「作為をほどこさず、自然のままであること」
がピッタリで、
バリデーションにおいては、その作業で「最初に、文字化・数値化したもの」と置き換えることができると考えます。
例えば、温度計の校正作業では、定められた手順に従って、標準値や温度計に表示された値を記録したものといえます。
■この値を、ノートに記録すれば、そのノートの記載部分が生データになり、
もし、壁に書いたら、その壁の記載された部分が生データということに
なってしまうと考えられます。
※極論ですが、記載された部分の壁を切って持ち運ぶことは出来ませんので、
生データには、相当キチンとした取り扱いが必要といえそうです。
規格では、「生データ」は以下のように定義されています。
>>「生データ」とは、
最終結果を得るために使用した元となるデータ及び最終結果を得るに至った過程を含む記録のことをいい、最終結果が正しく出されたことを検証することができるものであることが必要である。
例えば、生データとしては、次のものが挙げられる。
1.測定機器からプリント機能により出力されるデータ
2.記録計から出力されるチャート又は読み取った値を記録したもの
3.測定機器に表示される値を書き取ったもの
4.観察結果を書きとめたもの
5.チャートなどの波形データを電子的に記録したファイル
6.写真
7.上記のデータを使用し計算、換算などを行った際の過程を記録したものなど
GMP事例集「GMP20-5」より
※考えるにこれらは、
最初に、現場のデータを文字化や電子データ化されたもので、一切の作為がほどこされていないため、誰でも、正しいものと確信でき、安心して使うことができるデータになると思います。
■言い換えれば、
改ざんの余地が無い(少ない)ともいえるため、非常に重要なデータに位置づけされていると考えます。
「生データ」は唯一無二なもの!
>>生データは二つあってはならないものです。
最近の計測器は、ひとつのデータを表示したり、CD(コンパクトディスク)やSDカード(フラッシュメモリー)などに記録しますので、同じデータが2つ以上存在することも多々あります。
■しかし、どちらも生データと言う訳にはならないので、
どちらを生データとするのかなどをSOP(標準作業手順書)などで
決めておくことも重要なことと考えます。
しかし、確認コピーをとっておく必要がある「生データ」もあります。
ご存知のように、クリーンルーム等の清浄度を測定するために使われる粒子計数器(パーティクルカウンタ)は、測定後にプリントされる「測定値が記録された用紙」を生データとすることが多いと思います。
(先述した定義の”1.測定機器からプリント機能により出力されるデータ”に相当)
しかし、この用紙に感熱紙(正しくは感熱記録紙)を使っている場合、太陽光(紫外線)を浴びることで、記録が劣化(消える)して、見えなくなってしまいます。
□このような生データは、事前にコピーをとって、
コピー自体が生データですよと保証しなければなりません。
保証の仕方としては、有資格者がコピーして、原本と相違ない旨の確認と署名をします。(このコピーは、一般的に確認コピー(Certified Copy)と言われています)
■生データは、このようなことに留意して取り扱うことで、
生産設備が目的とする品質に適合する製品を恒常的に製造できることを
目的とするバリデーションにつながっていくと考えます。
※当社は、フィールドで適格性評価(クオリフィケーション)や
バリデーションを実施する立場から、規格の要求内容や定義を具現化
(具体化)して、お客様に満足して頂ける作業をお届けする努力を
続けています。
最後まで、お読みいただき有難うございました。