第329号 GMPのバリデーションと校正(キャリブレーション)の違いとは?
監査時に、時折、バリデーションと校正の違いについて確認されるようです。
監査に当社が立ち会うということはありませんが、お問い合せの内容からは監査時に、バリデーションと校正の違いを確認されているようです。
□これは、
最近のGMPに関連する規格(バリデーション基準やPIC/S等)への対応が厳しく求められていることもあって、バリデーションや校正(キャリブレーション)の理解度などを確認されているのではないかと思われます。
※今回は、
規格の定義から、バリデーションと校正の違いを考えてみたいと思います。
バリデーションと校正の違いは、「確認する対象が違う」ということと考えます。
まず、規格ではどのように定義されているか調べてみると
■バリデーションについては、バリデーション基準に
バリデーションは、製造所の構造設備並びに手順、工程その他の製造管理及び品質管理の方法(以下この基準において「製造手順書」という。)が期待される結果を与えることを検証し、これを文書化することによって、目的とする品質に適合する製品を恒常的に製造できるようにすることを目的とする。
と定義されています。
□簡単に言い換えれば、
製造する設備や装置が思うとおりに動くことを確認しておきなさい
と言うことだと考えられます。
■校正については、GMP事例集(2013年版)のGMP13-19に
校正とは、必要とされる精度を考慮し、適切な標準器や標準試料等を用いて、製造行為中に使用される計測器の表す値と真の値との関係を求めることを言う
と定義されています。
□校正についても、
言い換えれば、計測機器がキチンと動くことを確認しておきなさい
と言うことだと考えられます。
※このように、定義からみる違いは
バリデーションは「設備や装置」を確認し、校正は「計測機器」を確認すること
になると考えます。
家庭でお使いのオーブンを例にして考えると
■バリデーション(性能評価試験を取り上げて説明します。)
設備・装置:オーブンの『庫内が』所定の温度(例えば170℃)で
安定していることを確認することです。
庫内という、ある大きさを持つ空間が対象なので、クッキーの生地を置く場所によって焦げたり生焼けに仕上がらないかを確認するわけです。
□性能評価試験の具体的な方法は
標準(基準)の温度記録計で、オーブン庫内の複数点の温度を記録し、
その温度のバラツキ(温度分布)や安定の度合いを確認・評価します。
※この様に、バリデーションの適格性評価では
設備・装置:オーブン自体の性能を確認します。
■校正(キャリブレーション)とは
オーブンの庫内温度を測定している『計測機器:温度計が』正しい表示をすることを確認することです。
クッキーを170℃で焼いている、つもりでいても、誤差が大きくて 実は200℃だったりすれば、仕上がりは残念なことになります。
□確認する具体的な方法は
標準(基準)の温度計と、オーブンの温度計とを同じ温度の熱源に
挿入、測定し、その表示値の差(誤差)を確認します。
※この様に、校正はオーブンに装着されている
計測機器:温度センサ+温度指示部自体を確認します。
GMPは両方を実施することを要求しています。
GMPが要求するバリデーション、校正(キャリブレーション)の両方を生産現場で実施することで、良い製品を作り続ける製造設備であることが担保できることになると考えます。
□そして、
双方はGMPの重要な要求のため、監査員はバリデーションと
校正(キャリブレーション)の違いを確認されると考えられます。
※当社は、フィールドでバリデーションを実施する立場から、規格の要求
内容や定義を具現化(具体化)して、お客様に満足して頂ける作業を
お届けする努力を続けています。
最後まで、お読みいただき有難うございました。