第353号 メーカでない当社が根拠が要求されるバリデーション業務をどう行おうとしたのか?(その1)
妥当性のある根拠が必要なバリデーションとの出会い
今から20年前、
バリデーションという言葉が珍しい頃、お客様にバリデーションで何か支援できないかと考えて、実施に必要な規格や決め事などの調査を行っていました。
□まず、『バリデーションとは』というところからスタートしました。
当初は、バリデーション作業は、当社の業務であった「計装技術」の延長線と考えていたため、「なぜ今ここで、この作業なの?」と問われると窮するばかりでした。
その解決のヒントになったのは「Validate」と「Verify」の言葉使いに気づいたことでした。「Validate」も「Verify」も共に、翻訳すると「実証する」「検証する」。
では何故、この二つの言葉がFDAやISOの原文では区別されているのか?
ここにヒントがありました。
当社は、
「Validate」とは、決めたことそのものの合法性・合理性・正当性をみること
「Verify」とは、決めたことに対して、行った事実が合っているかどうかを確認すること、と考えました。
⇒ 従って、「バリデーション」とは、
業務ですることの、そうする具体的な根拠を持つ必要がある作業、
と解釈することと考えました。
□そんな時、
ある製薬会社から生産設備の「コンピュータバリデーション」という
バリデーションに関わる仕事の依頼を頂くことができました。
※ これが当社がバリデーションに取り組む大きなキッカケになりました。
実は、規格にはバリデーションで何を具体的に実施したら良いかは書いてない
当時、お客様から言われることは、○○規格で実施するというものでした。
例えば、当時の厚生労働省のバリデーション基準と指示を受けて、何を実施したら良いかを探しても
1.設備の据付時における設備の適格性の確認
2.校正
3.稼動性能適格性の確認
4.実生産規模での確認
と記載されるのみで、
■当社が調べた規格では、
バリデーションの対象となる設備の何を、どのように
実施したら良いか分からないという状況でした。
そこで、最初にやったことは規格中の定義を読み解くことでした。
厚生労働省のバリデーション基準の定義でみてみると
例えば、「校正」では
この基準で「校正」とは、必要とされる精度を考慮して、適切な標準器や標準試料等を用いて製造行為中に使用される計測器の表す値と真の値との関係を求めることをいう。
□ この定義を以下の3つのキーワードに読み解いて、それぞれを具体化しました。
必要とされている精度
製品品質上、対象となる計測器に求める精度
適切な標準器や標準試料等
国際基準、国家基準までのトレーサビリティがとれていること
対象となる計測器に求める精度の1/3~1/10の精度を有すること
製造行為中に使用される計測器
製品品質上、管理(コントロール)が必要な物理量の値を表す計測器
(この計測器は、一般的には、センサ+変換器+表示器の組み合わせ)
⇒ こんな感じに、規格にある大量の定義をコツコツと
読み解き続けたことを覚えています。
■ しかし、この様に、規格の定義を読み解いてみたものの
実施する対象について、確証を持って妥当性のある根拠を
明確にするというところまでには、ほど遠いものでした。
当社独自の考え方がいるということに気がつきました。
バリデーションはシステム、設備を対象として検証しているが、
当社はメーカでないため、
システムや設備の構成が分からない。
システムや設備に使われている機器類の関連性が分からない等々
⇒そのため、
何をバリデーションとして実施して良いかも明確に分からない
ということになります。
□ そんな思考の中、当社社長よりそれぞれの機能に注目するという
助言を受け、「機能関連図」という当社独自の考え方に
たどり着くことになりました。
■ この「機能関連図」を作ることで、根拠を持って、何をどのように
実施すれば良いか明確にすることができるようになりました。
即ち、バリデーションの意味そのものの作業を実行できる素地が
出来上がりました。
次回は、この「機能関連図」についてご紹介します。
※ 当社は、フィールドでバリデーションを実施する立場から、
規格の要求内容や定義を具現化(具体化)して、お客様に
満足して頂ける作業をお届けする努力を続けています。
最後まで、お読みいただき有難うございました。