第399号 mgレベルでの、電子天秤使用時のモノの温度の影響
電子天びん使用時、測定物の温度はどれぐらい測定値(重さ)に影響するのか
一般的に、電子天びんで重さを測定するときには、計量容器とその中のサンプルの温度は周囲温度と同じにします。
周囲と温度差があると『空気対流が発生し、計量結果に影響する可能性があるから』とメーカの資料にも記載されています。
そのため、今までの実験では、測定物や秤を同じ場所に置いて温度を同じにする『温度慣らし』を行って測定物の重さを測定しています。
今まで、温度によってどれぐらい重さに影響するのかは知らずに実験をしていました。
今回は、もし、『温度慣らし』をせずにmgレベルでの差異を見るような測定作業をしてしまったら、どれぐらい指示に影響があるのか(極端に差のある温度を含めて)調べてみることにしました。
水温80℃では「+1.28mg」も変化しました
電子天びんで、温度の異なる測定対象を60分間測定し、指示(重さ)の変化を調べました。
[測定対象]
ガラス製メスフラスコ(容量:1ml)に、水1mlを入れたもの(合計 約13.4g)
[測定の仕方]
1.測定物(メスフラスコと水)を条件温度にする。
条件温度:25℃/40℃/80℃
2.図のように、電子天びんに置き、指示をゼロ(0.0000g)にする。
3.電子天びんの指示値を30秒毎に60分間記録する。
[使用した秤の仕様]
名称:電子天秤(81g/210g)
メーカ :METTLER TOLEDO
型式:XS205DU
精度(直線性):±0.2mg
[測定結果とグラフ]
(30秒間隔の測定データから抜粋)
「グラフ」
□ 今回の測定結果からは
・測定物の温度が80℃では、60分後に1mgを超える変化があった。
(今回の対象(水)は約1g→0.1%の影響)
・環境温度に近い25℃と、40℃では、変化は出なかった。
・測定終了時の水の温度はほぼ常温になっていた。
※ 但し、上記の実験は、あくまで一例で、種々の条件により計測値は異なります。
やはり、電子天びん使用時は、『温度』に相当気を使う必要がある!
日本薬局方の一般試験法や電子天びんの取扱説明書などには、『温度』に関して以下のような記述が見られます。
[日本薬局方]
・室温になるまで放冷する
・デシケータ(減圧、シリカゲル)に移して30分間放冷し、質量を精密に量る。
[取扱説明書]
・室温を可能な限り一定に保ってください。
・乾燥オーブンや冷蔵庫から取り出したばかりのサンプルを計量しない
など、少し強めの書き方になっていることも、今回の実験の結果からうなずけます。
『温度』以外の周囲環境にも注意が必要です
電子天びん使用時には、温度以外の周囲環境が及ぼす影響の例として、
・測定物の蒸発や吸湿によるもの
・静電気によるもの
などが挙げられています。
□ 実務では、これらの注意点を取扱説明書等で確認した上で、慎重に取り扱う必要があると考えます。
※ 当社は、
この様な実験の方法や測定データ等のノウハウで、どんな環境に
おいても、お客様に満足して頂ける作業をお届けする努力を続けています。
最後まで、お読みいただき有難うございました。