第455号 計器目盛の上限値、下限値の標準が無い時の校正の仕方(考え方)
標準を規格は求めているけれど・・・
前回のメルマガで、JIS規格の要求では目盛りの上限値と下限値も校正する必要があることをお届けしました。
【規格要求】
JIS C 1803-1995 工業プロセス計測制御機器の性能表示法通則
6.確認試験
定格性能として表示された誤差の値を確認するために行う基準性能及び影響変動の試験は、被試験機器の入力の下限値と上限値を含む5点以上について対応する出力を測定する。
※しかし、実際、この要求に従って、上限値と下限値を校正しようとすると、校正するための標準がない場合があります。
目盛りの上限値、下限値の標準が無い場合もある
校正する標準が無いという状況をもっと分かり易くするために、目盛りの上限値、下限値の標準が無い計器の具体例をひとつ挙げてみます。
■使用用途の多いpH計を例にします。
pH計は、水溶液の酸性・アルカリ性の程度を測る計器で、使用台数が多い計測器です。
pH測定の用途は非常に広範囲で、工場における製品製造の工程管理から、工場排水や河川水の公害監視に至るまで様々な用途で使われています。
■pH計の測定範囲
0~14pH」や「2~12pH」の物を多く見かけます。
■pH計の校正に使われる標準液
(一般的には)1とか12、14pHの標準液を入手できない
[標準液の種類]
※このように、測定範囲の上限値(14pH付近)と下限値(0pH付近)を測定する標準液が無いことが分かります。
従って、上限値、下限値を校正することは不可能と言うことになります。
解決方法は2つの校正を組み合わせる方法を提案します
当社が提案する方法は、「模擬入力校正」と「実入力校正」の2つの校正方法を組合せます。
■まずは、模擬入力校正を行います。
「模擬入力校正」は、pH計の表示に該当する信号(DC電圧)をpH計本体に印加して、上限値、下限値を含む5点以上の表示値を確認します。
※この校正で問題がなければ、正常なセンサを使用すれば、pH計の表示が正しく表示されることが確認できます。
■標準液を使って、実入力校正を行います。
「実入力校正」はpH4.01、pH6.86、pH9.18などのいくつかの標準液を使って、pH計本体の表示値を確認します。
※この校正で問題がなければ、標準液で校正された範囲は正しく表示されると確認できます。
2つの校正方法をグラフにすると納得!
2つの校正データを組み合わせると
【目盛りが0~14pHを例にすると】
「模擬入力校正」のデータ(黒点線)と「実入力校正」のデータ(緑実線)が近似(重なる)することを確認すれば、標準液で測定していない黒点線の領域も正しいと推測できると考えます。
■このように、2つの校正方法を組み合わせることで、やむなくですが、目盛り範囲全体の校正と考えることもできると思います。
※当社は、フィールドでバリデーション・キャリブレーションを実施する立場から、規格の要求内容や定義を具体化(具現化)して、お客様に満足して頂ける作業をお届けする努力を続けています。
最後まで、お読みいただき有難うございました。