第476号 プラントデータとなる計測機器の校正は使用場所で実施するのがおすすめ
コンビナートプラントに使用される計測機器の校正場所を考えるきっかけ・・・
> 経済産業省は、平成28年度にビックデータを使って自主保安高度化に向けた実証試験を実施しました。
■ ここで注目するのが
このビッグデータは、コンビナート事業所等の設備データやテキストデータ(引継書、業務日誌、ヒヤリ・ハット事象等)等から積み上げられています。
即ち、プラント内の計測機器のデータが大きな役割をもっているため、計測機器のデータが正しいことが実証試験で重要にな.ってくると考えられることです。
□ そこで疑問になることが、計測機器のデータは、「計測機器を取り外して試験室などで校正した場合」と「現場でそのまま校正した場合」、どちらの方がより正しいのかということです。
※ この疑問を読み解くために、まずは、規格面から考えてみたいと思います。
校正を定めるJIS規格はどちらでも良いと思われます
> JISで校正に関する規格を調べてみました。
この決め事を見ると
(1)は、現場で校正をしなさい。(2)は、現場以外の試験室などで校正しなさいと解釈でき結局どっちなんだと悩んでしまいます。
■ ひとつの考え方としては、校正場所の環境条件が計測器に影響する場合は使用場所で校正し、影響しない場合はどちらで校正しても良いということだと思います。
※ 最終的には、これらの規格を参考にしながら、自ら、ベストと考える方を選ぶ必要があると考えられます。
では、校正場所の環境条件が影響する場合とはどんなケースなのでしょうか。
校正場所の違いによるデータ誤差を確認してみました
> 校正場所の違いを試験環境の違いと考えて、試験環境を変えた実験を行いました。
ここでは計測機器(差圧伝送器)を取り付けた場所の環境温度が変わったとき計測機器の出力がどのようになるのかを測定するものです。
【実験方法の概要】
①計測機器(差圧伝送器)を恒温槽の中に設置し
②槽内の温度を-5/25/50℃で安定させて
③それぞれ安定した温度で計測機器の出力を電流計で測定する
【実験結果のグラフ】
このグラフは、横軸:検査点(標準圧力計の圧力値)、縦軸を誤差(計測機器の出力値の誤差)にとり恒温槽の温度(-5/25/50℃)毎の誤差変化を表しています。
■ この試験結果で気になることは、
誤差の傾斜が、「-5℃は右上がり(青色)」、「25℃は真横(緑色)」、「50℃は右下がり(橙色)」と変わっていることです。
この試験環境による誤差を計測機器の使用時誤差として小さくするには、
誤差変化が上下にシフトしているだけであれば、取り付けた状態でゼロ点調整をすれば、温度環境変化に見合った状態に修正できると考えますが、
傾斜の向きが違っていると、ゼロ点調整だけではなかなか修正が難しいと言うことです。
※ この実験からは、計測機器の据付現場と試験環境を同じにして校正すれば最も納得できると考えられますが、実際に同じ環境をつくることが難しい場合もあるかもしれません。
据付現場で校正すれば誤差の心配は軽減される
> 率直な意見としては、計測機器を実際に使用する環境=現場で校正することが良いような気がします。
■ 今回の読み解きの結果からは、
今回のテーマ「プラントデータとなる計測機器の校正は使用場所で実施すべきか」については、『使用現場で校正するのがベター』だと言う結論になると考えます。
皆さんはどのように考えられるのでしょうか。
※ 当社は、フィールドでバリデーションを実施する立場から、規格の要求内容や定義を具体化(具現化)して、お客様に満足して頂ける作業をお届けする努力を続けています。
最後まで、お読みいただき有難うございました。