第520号 「現地校正」と「引取校正」どちらの校正を実施するべきか
「現地校正」と「引取校正」の2パターンで見積もりが欲しい
> 当社には、時折、計測機器の校正依頼において、「現地校正」「引取校正」の両方の費用についてのお問い合わせをいただくことがあります。
そこで、初めに、それぞれどのような校正なのか簡単に記します。
■ 「現地校正」は
⇒校正の対象となる計測機器が現地に据え付けられた状態のまま校正を行います。
そのため、測定の環境は計測機器の使用環境と同じ状態で実施されます。
■ 「引取校正」は
⇒計測機器を据え付け場所から取り外して、検査室などに持ち込んで校正を行います。
測定環境は、一般的には使用場所とは異なった状態になります。
このように、「現地校正」と「引取校正」の大きな違いは、校正場所の違いになると考えます。
費用面でも違いが生まれます
> その違いは、校正作業自体は同じ条件になりますが
「現地校正」は、作業員が拠点から現場まで移動する費用が加算され、
「引取校正」は、計測機器の輸送費が加算されることになります。
この加算される費用の大きさを考えたとき、「現地校正」の方が「引取校正」より、圧倒的に大きくなることは容易に想像できると思います。
■ つまり、「現地校正」と「引取校正」の2パターンの見積もり依頼は、2つの校正方法の違いによって生じる費用の差を求められることになると考えられます。
※ しかし、校正には、費用面と同様に重要な測定の誤差への影響も忘れてはいけないと思います。
測定の誤差にも大きな影響を与えることがあります
> 「現地校正」と「引取校正」での校正場所の違いは、測定環境の違いとなり、測定の誤差に大きな影響を及ぼすことになります。
□ 測定誤差は大きく3つに分かれます。
誤差の種類と要因を記します。
即ち、「引取校正」は、測定する検査室などの環境が据付場所の環境と違うことにより、「環境条件に依存した誤差」が『発生する』ことになります。
しかし、「現場校正」は、同一の環境で測定するため「環境条件に依存した誤差」が『発生しない』と考えられます。
■ 「現場校正」「引取校正」のどちらで実施するかは、それぞれのメリット・デメリットを検討して、お客様が決めることになると考えます。
しかし、GMPなどの規格では「現地校正」が要求されています
> GMP事例集(2013年版)のGMP13-19には、校正の定義が記載されています。
当社では、この定義の『製造行為中に使用される計測器』を、現場で使用されているままの状態と読み解いています。
■ このように、GMPなどの医薬品などを製造する工程においては、目的とする品質に適合する製品を恒常的に製造できるようにすることを目的とするバリデーションの一端を担う校正は、『現地校正』を実施しなければならないと考えられます。
※ 当社は、フィールドでバリデーション・キャリブレーションを実施する立場から、規格の要求内容や定義を具体化(具現化)して、お客様に満足して頂ける作業をお届けする努力を続けています。
最後まで、お読みいただき有難うございました。