第604号 キャリブレーション時の環境より生じる誤差の考え方について
キャリブレーションでは温度等の測定環境によって誤差が生まれる!
> 製薬の製造設備に付帯する計測機器は、GMP省令の要求に基づき、製造行為中に使用される計測器としてキャリブレーションを実施する必要があります。
このことは、言い換えれば、製造現場の環境でキャリブレーションを実施することになります。
■ これを実現しようとする時、計測機器の使用環境とキャリブレーション時の測定環境が違うことがキャリブレーション時の誤差に影響すると考えられます。
※ 具体的に、どんな感じの誤差が出るのでしょう。
環境温度の実験データからご紹介したいと思います。
製造設備に多く使用されている差圧伝送器の実験データをご紹介します
> この実験は、以下の手順で実施しました。
① 差圧伝送器の出力信号(電流)を測定できるように配線する。
② 差圧伝送器を恒温槽に設置し、『-5℃』に設定して運転を開始する。
③ 恒温槽の温度が安定したら、0~100%までの各ポイントの圧力を入力し、そのときの出力信号を記録する。
④ 標準圧力計との差を求め、測定範囲(フルスケール)に対する誤差を算出する。
⑤ 恒温槽の温度を『25℃』及び『50℃』に設定し、同様に測定を行う。
■ 測定のイメージ図になります。
■ 測定データとそのグラフになります。
本ページでの結果は一例であり、結果は機種・レンジ等により異なります。
⇒ この差圧伝送器の実験データから次のことが分かります。
□ 低い環境温度(-5℃)では誤差がプラスに振れ、高い環境温度(+50℃)では誤差がマイナスに振れる。
□ 環境温度の高い、低いに関わらず、入力圧力が大きいほど誤差が大きくなる。
※ この実験結果からは、小さな値になりますが測定環境温度によって誤差が変化することが分かります。
原則は使用環境でキャリブレーションを実施する!
> 実験の測定データからは、
例えば、製造時の使用環境温度が「50℃」の伝送器を「25℃」の環境でキャリブレーションを実施した場合、測定データのグラフの赤矢印のように0.15%FSの差があることが分かります。
■ 従って、この伝送器のキャリブレーションでは、製造使用時の「-0.14%FS」のデータでなければならないところ、「0.01%FS」とほぼ誤差0となり、本来の誤差を求めることが出来ていません。
即ち、原則は使用環境でキャリブレーションを実施する必要があると言えると考えます。
※ しかし、実際、製造時の環境温度と同じ温度でキャリブレーションを実施することは難しいと考えられますので、その時の考え方のひとつをご紹介したいと思います。
品質への誤差影響度によって、キャリブレーション測定環境を考慮する
> ご存知のように、現場で使用する計測機器には環境による影響が記載されている機器が多くありますので、この記載値を活用する方法になります。
※ 生産時の環境温度とキャリブレーション時の環境温度に差がある場合は、このような記載値で表される誤差がどれぐらい品質へ影響するのかを検討することで環境温度差への対応方法を決めるという考え方もあると思います。
▼ キャリブレーションの課題も、コチラからご相談していただくこともできます。
※ 当社は、この様な実験の方法や測定データ等のノウハウで、どんな環境においても、お客様に満足して頂ける作業をお届けする努力を続けています。
最後まで、お読みいただき有難うございました。