第606号 キャリブレーション時の環境より生じる誤差の考え方について(その2)
キャリブレーション時の周囲温度以外の誤差に影響することを知りたい
> 前々回の604号では、キャリブレーション時の環境により生じる誤差の考え方として周囲温度に注目してご紹介しましたが、他の影響についての情報が欲しいとのお話を頂きました。
そこで、今回は周囲温度以外のキャリブレーション時の環境より生じる誤差についてご紹介したいと思います。
キャリブレーション時、環境から影響される多くの誤差があります
> 考えなければならない誤差要素は「気圧」「重力」「電磁波」など様々なものが考えられます。
例えば
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- 温度勾配、温度変化率
- 大気圧
- 相対気圧
- センサーの応答係数
- 重力に対する向き
- 電磁妨害
等々
これらに影響される誤差の大小や出方は様々ですが、実験のし易い「重力」に注目して圧力伝送器の傾きの影響を調べることにしました。
圧力伝送器の傾きによる出力変化
> この実験は、圧力センサ部にかかる重力の影響を確認するために、表示部が「左向き」「上向き」「右向き」の状態(環境温度は「25℃」)で測定を行いました。
【測定の手順】
測定は以下の手順で実施しました。
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- 差圧伝送器を測定のイメージのように配管・配線する。
- 差圧伝送器を「表示部を上向き」にして恒温槽に設置し、『25℃』に設定し運転を開始する。
- 恒温槽の温度が安定したら、0~100%までの各ポイントの圧力を入力し、そのときの出力信号を記録する。
- 表示器を「左向き」「右向け」に設置し、同様に測定する。
- 標準圧力計との差を求め、測定範囲(フルスケール)に対する誤差を算出する。
【測定のイメージ】
【結果とグラフ】
※本ページでの結果は一例であり、結果は機種・レンジ等により異なります。
⇒この差圧伝送器の実験結果とグラフからは取付姿勢が右向きはプラス側の誤差、左向きはマイナス側の誤差、上向きは0付近の誤差変化を示したことや誤差傾向が非常に似ていることも分かります。
※このようにメーカの測定環境スペックに近い25℃・上向きのデータが、0%付近の誤差を示したことは納得感があります。
やはり、原則は使用環境でキャリブレーションを実施するのが良い
> 実験データのグラフから、右向きの折れ線グラフは下に移動させると上向きの折れ線にほぼ合致し、左向きの折れ線グラフは上に移動させると上向きの折れ線にほぼ合致します。
⇒ このことは、主な誤差は重力分だけ平行移動していると考えられますので現場で据え着いた状態で0点調整(平行移動)させることでキャリブレーション時の重力による誤差をキャンセルできることが分かります。
▼ キャリブレーションの課題も、コチラからご相談していただくこともできます。
※ 当社は、この様な実験の方法や測定データ等のノウハウで、どんな環境においても、お客様に満足して頂ける作業をお届けする努力を続けています。
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