第607号 キャリブレーション時の環境より生じる誤差の考え方について(その3)
『センサ』も、キャリブレーション時の環境により生じる誤差に影響する?
> このメルマガでは、環境から影響される誤差要素として「周囲温度」「重力」の影響をお届けしてきました。
■ この二つの誤差要素は環境と言う言葉に合っていますが、センサは環境とは違うため、キャリブレーション時の誤差に影響しない様に思われがちです。
しかし、実は、センサの汚染/汚れの状態やセンサの特異性や応答性は誤差発生に大きく影響することが知られています。
※ そこで、今回はセンサの応答性の一つとして、キャリブレーション時に多く使用される温度センサの応答性を調べることにしました。
5種類の測温抵抗体温度センサの時定数を測りました
> ご存知の様に、温度センサと測定対象の温度が一致するまでは、遅れがあることが分かっています。
キャリブレーション時に頻繁に使用される接触形温度センサーの場合は、温度センサ自体に熱容量があり、測定対象物と温度センサが同じ温度(熱平衡状態)になるまでにある程度の時間を要します。
※ 今回は、測温抵抗体の温度センサに注目して、熱平衡状態の63.2%に要する時間で表される時定数を測定することにします。
応答性の指標になる時定数で、最も長いものは「約6.5分」!
> 今回は以下の測温抵抗体の温度センサを用いて測定をおこないました。
センサの種別 | センサの仕様 | センサのイメージ (先端部) |
---|---|---|
①測温抵抗体 (Pt100Ω) |
Φ3.2mm | |
②測温抵抗体 (Pt101Ω) |
Φ3.2mm +測定用メタル |
|
③測温抵抗体 (Pt102Ω) |
フィルム型 | |
④測温抵抗体 (Pt103Ω) |
フィルム型 +測定用メタル |
|
⑤測温抵抗体 (Pt104Ω) |
Φ4.8mm |
【測定の手順】
測定は以下の手順で実施しました。
- 温度センサを測定のイメージのように設置して温度変化を測定する
- 温度センサの設置場所⇒下記の環境Aで安定した状態から環境Bにセンサを挿入する
- 環境A:20℃ センサ付近の風速はほぼ0m/sec
- 環境B:70℃ センサ付近の風速は平均0.67m/sec (0.59~0.76m/sec)
【測定のイメージ】
【結果とグラフ】
各センサにおいて、温度変化(昇温方向)は以下のようになりました。
※本ページでの結果は一例であり、結果は機種・レンジ等により異なります。
⇒この温度センサの実験データから次のことが分かります。
- □時定数が最も小さいのは、「③のフィルムセンサ」で9秒と短い
- □時定数が最も大きいのは、「④のフィルム型+測定用メタル」で395秒で約6.5分になった
※この実験結果からは、温度センサの種類によって時定数が大きく違うことが分かります。
キャリブレーション時に使用する温度センサの種類が誤差に影響する
> これらの実験結果からは、測定対象物と温度センサが同じ温度になるまでの時間が温度センサの種類によって違うことになるため、キャリブレーション時の読取タイミングに大きく影響することになります。
※ 実際のキャリブレーション時には、最も作業環境に合った温度センサを選ぶことになりますので温度センサ個々の応答性等の特性を理解しておくことは非常に重要なことと考えます。
▼ キャリブレーションの課題も、コチラからご相談していただくこともできます。
※ 当社は、この様な実験の方法や測定データ等のノウハウで、どんな環境においても、お客様に満足して頂ける作業をお届けする努力を続けています。
最後まで、お読みいただき有難うございました。