第630号 GMP(医薬品製造)とFAO/WHO(食品製造)のバリデーションの違い
医薬品製造と食品製造のバリデーションに違いがある?
> 最近、食品向けの設備メーカさんとの打ち合わせで食品製造と医薬品製造でのバリデーションの違いについて話題になることがあります。
■ 現状では食品関連の設備で「バリデーション」が取り上げられることは少ないと思いますが少しずつ、関心を持つ方が増えているとも感じることがあります。
⇒ そこで、今回は「①医薬品」と「②食品製造」の2つの規格からバリデーションについて考えてみたいと思います。
① 薬生監麻発0428第2号 医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の一部改正に ついて(GMP省令)
② 国際連合食糧農業機関(FAO)及び世界保健機関(WHO)から出版され厚生労働省によって翻訳された「食品安全管理手段のバリデーションに関するガイドライン(CAC/GL 69-2008)」
医薬品製造のGMP省令と食品製造のガイドラインでのバリデーションを比較
> 2つの規格のバリデーションの「定義」や「進め方」などで比較してみました。
定義 | GMP省令(医薬品製造) | ガイドライン(食品製造) |
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第4 バリデーション指針 2. バリデーション指針 (1)バリデーションの目的等 「バリデーション」とは、 製造所の構造設備並びに手順、工程その他の製造管理及び品質管理の方法(以下「製造手順等」という。)が期待される結果を与えることを検証し、これを文書とすることをいうものであること。 |
バリデーション: 管理手段又は管理手段の組み合わせが適切に実施された場合に、特定の成果に至るまで危害要因を管理できるという証拠を得ること。 |
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進め方 | 第4 バリデーション指針 2. バリデーション指針 (5)バリデーションの種類等 ① 適格性評価(Qualification) 新たに据え付け又は変更する設備、装置又はシステムについて、個別に又は適宜組み合わせて適格性を評価し、文書とする。通常、以下のア.からエ.までの適格性評価を順次段階的に行っていくことが基本となる。イ.以降の適格性評価では、適切に校正を行った計測器を用いることが求められる。 |
バリデーションのプロセスに含まれる手順 バリデーション前に必要とされる作業完了後の、管理手段のバリデーションのプロセスには以下の段階が含まれる。 •アプローチ又はアプローチの組み合わせを決定する。 •管理手段又は管理手段の組み合わせが適切に実施された場合に、特定の成果に至るまで危害要因を一貫して管理できることを立証するパラメータ及び決定基準を 定義する。 •関連するバリデーション情報を収集し、必要であれば研究を実施する。 •結果を分析する。 •バリデーションを記録し、精査する。 |
第4 バリデーション指針 2. バリデーション指針 (5)バリデーションの種類等 ② プロセスバリデーション(Process Validation:PV) 工業化研究の結果、既存の類似製品の製造実績等に基づく製品品質への影響要因(例えば、原料等の物性、操作条件等)を考慮して設定した許容条件の下で工程が稼働し、求められる品質の製品が恒常的に得られる妥当な工程である旨を検証し、文書とする。 |
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当社の見方 | 医薬品製造においては、適格性評価(Qualification) ⇒プロセスバリデーション(Process Validation)と段階的に実施する。 |
管理手段を設備込みでバリデーションとして立証する。 |
※ この2つの規格では、当社の見方のように、バリデーションの進め方には実施の流れに違いがあると考えます。
医薬品製造と食品製造ではバリデーションの進め方が違う!
> 今回ご紹介しました情報からは、似たような定義ではあるが、実施方法に違いがあることが分かります。
■ 医薬品製造においては、
⇒ 設備が思った通りに動いていることを確認し、次に手順を検証する流れで段階的に実施されています。
■ 食品製造においては、
⇒ 設備も纏めて手順を検証すると考えられます。
⇒ このように、医薬品製造では設備→手順と順に進められるが、食品製造では両方を一緒に進めるという違いがあると考えられます。
それぞれの使用目的に応じた最適なバリデーションのやり方になっている
> 医薬品と食品の使用目的はそれぞれ次の様に言えるのではないでしょうか
☑ 医薬品は、病気の診断、治療または予防に使用されたり、身体の構造または機能に影響を及ぼす目的として作られる
☑ 食品は、医薬品・医薬部外品以外のすべての飲食物と定義され、特定の機能などを表示することは認められていない
この考え方を言い換えると、薬は人の生命に直結することがあるが、食品の場合は食べ過ぎてもお腹をこわすことはあるが、生命に直結するということは、ほぼないということだと思います。
⇒ 医薬品と食品のこの差によって、バリデーションのやり方に違いが生じると考えられます。
※ 今回調べた2つ規格の要求からは、製造する対象製品によって違いはあるものの「最適なバリデーションの進め方が提案されている」と考えられます。
▼ 「医薬品・食品製造でのバリデーション、キャリブレーション」についてもコチラからご相談していただくこともできます。
※ 当社は、フィールドでバリデーション・キャリブレーションを実施する立場から、規格の要求内容や定義を具体化(具現化)して、お客様に満足して頂ける作業をお届けする努力を続けています。
最後まで、お読みいただき有難うございました。