フリーザーのモノの取り出し、どの程度なら扉を開けてもよい? ~ 第648号 ~
暑い時期は特に気になる?扉開放時のフリーザーの温度上昇
> 7月も半ばを超え、本格的に暑くなってきました。特にここ1-2週間は猛烈な暑さです。ご家庭でも冷蔵庫、冷凍庫を開けたときに流れる冷気がハッキリ見えるようになってきたのではないでしょうか。
バイオや医薬業界の試験室等でよく使われる「フリーザー」は、-85℃や-100℃、-150℃など温度が低いものも多く、モノの出し入れのために扉を開けると冷気が流れ出てきます。
扉を開けると、当然内部の温度は上昇します。冷凍保管されている試料類への影響をさけるため、”できるだけ”内部の温度を上げないように、“できるだけ”扉を開ける時間を短くする、といったことを励行されているのでは ないでしょうか。
しかし、“できるだけ開ける時間を短くする”のような設備の運用ルールの記述だと、人によるバラつきができそうです。
また、大事な保管物を守るために、“扉の開放は〇分以内”とルール化するにしても、その開放時間なら大丈夫!といった安心感(拠り所)が欲しいところ。
扉の開放時間と温度上昇の関係が分かると、その安心感につながりそうです。
槽内の位置により温度変化の違いはかなりある!
> -85℃設定のフリーザーチェストタイプ(上開き)の扉を3/10/15分間、開けた場合の温度変化を測定しました。
■ 測定位置
■ 測定結果
3分 | 測定位置 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
①下 | ②中 | ③上 | ④上(参考) | |||
開放前 | -81.0 | -83.7 | -83.2 | -81.9 | ||
最高温度 | -78.5 | -80.5 | -76.2 | -59.7 | ||
上昇温度 | 2.5 | 3.2 | 7.0 | 22.2 |
10分 | 測定位置 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
①下 | ②中 | ③上 | ④上(参考) | |||
開放前 | -80.7 | -83.3 | -83.6 | -81.3 | ||
最高温度 | -76.8 | -77.8 | -72.4 | -42.8 | 上昇温度 | 3.9 | 5.5 | 11.2 | 38.5 |
15分 | 測定位置 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
①下 | ②中 | ③上 | ④上(参考) | |||
開放前 | -80.1 | -83.4 | -82.6 | -81.2 | ||
最高温度 | -73.7 | -72.9 | -65.6 | -27.9 | ||
上昇温度 | 6.4 | 10.5 | 17.0 | 53.3 |
■ まとめ
3分間の開放では、扉付近の上段温度が大幅に上昇した一方で、中段、下段は-80℃付近を維持していました。
意外に思ったのは、槽の下の方は思ったより温度が上昇してこないことでした。
10分、15分と扉の開放時間が長くなるとともに当然温度は上昇するものの、 15分でも温度がわずか7℃程度しか上がりませんでした。
室温と設定値の温度差が100℃以上あることを考えると、結構冷えた状態を保てていると思いました。
これは、開放時の冷気が逃げにくいチェストタイプ(上開き)であったことも要因の一つと考えられます。
実測しておくと、設備運用ルールの根拠にもできそう
> 低温フリーザーを運用されているお客様の現場にいくと、扉開閉は〇秒以内、といったルールが表示されている場合があります。
また今回の結果からは扉に近い場所の温度上昇が大きかったため、保管物を置く場所もどこでもいいわけではなさそうです。
今回は無負荷での測定結果でしたが、データを取ることで、実際のフリーザーを運用する際の温度変化を知ることができ、保管物に影響がでない運用ルール(扉の開閉時間)の根拠にもなり得ると思います。
▼ 「フリーザー」の温度マッピングについても「無料オンライン相談会」からご相談していただくこともできます。
※ 当社は、フィールドでバリデーション・キャリブレーションを実施する立場から、規格の要求内容や定義を具体化(具現化)して、お客様に満足して頂ける作業をお届けする努力を続けています。
最後まで、お読みいただき有難うございました。