ライフサイエンス分野で使用する機器にキャリブレーション(校正)は必要なの? ~ 第671号 ~
ラボ室、研究室で使用する装置、機器のキャリブレーション(校正)は必要なの?
> 先日、ライフサイエンス分野のお客様より「ラボ室、研究室で使用する装置、機器のキャリブレーション(校正)は必要なの?」とのご相談がありました。
そこで、今回は主にライフサイエンス分野の「ラボ室」や「研究室」などの「研究開発」で使用されている「装置」、「機器」のキャリブレーション(校正)が必要かについて考えてみたいと思います。
当社のラボ部門のお客様は?
> 当社のお客様の中でラボ部門の「装置」「機器」のご依頼をいただくのはどのくらいかを調べてみました。製造部門と比較したラボ部門のご依頼状況の実状が少しわかるかもしれないとの考えです。
バリデーションやキャリブレーション(校正)のご依頼元部門を調べてみると、製造所の「製造部門」や「品質管理部門」が圧倒的に多く、製造所敷地内にある「ラボ室」や「研究室」などの「ラボ部門(研究開発部門)」で使用している「装置」「機器」においては(仮に同じ装置・機器であっても)かなり少なくなり、さらに製造所と異なる地域における「研究開発」施設においてはほとんどないことがわかりました。
このことは、お客様にとって「ラボ部門」の機器は優先順位が低めである場合が多いからではないかと思われます。色々と考える中で、「規格・規制の要件はどうなっているんだろう?」と思い、ラボ部門に関連する規格を調べてみました。
ラボ室・研究室に関連する規格・規制を調べてみました
> 研究室などラボで求められる「きまり」として「GLP(Good Laboratory Practice)」があります。ここでは「医薬品GLP」で求められるバリデーション・キャリブレーション(校正)を確認してみたいと思います。
■ 医薬品GLP省令
・・・前略・・・
第三章 試験施設及び機器
(試験施設)
第九条 試験施設は、試験を実施するため必要な面積及び構造を有し、かつ、その機能を維持するため試験に影響を及ぼすものから十分に分離されていなければならない。
2 動物を用いた試験を行う試験施設は、動物を適切に飼育し、又は管理するため、飼育施設、飼料、補給品等を保管する動物用品供給施設その他必要な施設設備を有しなければならない。
3 試験施設は、被験物質等の取扱区域、試験操作区域その他の試験を適切に実施するために必要な区分された区域を有しなければならない。
4 試験施設は、資料保存施設を有しなければならない。
(機器)
第十条 試験成績の収集、測定又は解析に使用される機器、施設の環境を保持するために使用される機器その他試験を行うために必要な機器(次項及び次条第一項第二号において単に「機器」という。)は、適切に設計され、十分な処理能力を有し、適切に配置されなければならない。
2 機器は、適切に保守点検、清掃及び修理が行われなければならない。
3 前項の保守点検、清掃及び修理を行った場合には、その日付、内容及び実施者を文書により記録し、これを保存しなければならない。
(平二〇厚労令一一四・平二六厚労令八七・一部改正)
・・・後略・・・
医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令(平成九年三月二十六日)
※ 「機器」について「適切に保守点検、清掃及び修理が行われなければならない。」と記載されていますが、「校正」の実施については書かれていません。では、校正は必要ないのでしょうか?
次に「施行通知」を見てみます。
■ 医薬品GLP省令 施行通知
・・・前略・・・
(8)第10条関係
第2項の「保守点検」には、標準操作手順書に従って定期的に実施されるテスト、校正、標準化等を含むものであること。
(9)第11条関係
ア 第1項の「標準操作手順書」とは、通常は試験計画書に詳しく記載されていない試験、業務の実施方法等を文書化したものであること。
イ 標準操作手順書は運営管理者の責任において作成するものであること。
ウ 標準操作手順書を補足するものとして文献等を利用することができること。
エ 第1項第1号の「管理」には、各部門における受領、表示、保管、取扱い、媒体との混合、サンプリングの方法等を含むものであること。
オ 同項第2号の「機器の保守点検及び修理」には、機器の点検、清掃、保守、テスト、校正及び標準化の方法及び実施計画(スケジュール)並びに機器が故障あるいは機能不全を生じた際にとられる修理手続を明記すること。
カ 同項第11号の「生データの管理」には、記録類の維持管理、保存及び検索が含まれること。
キ 同項第12号の「信頼性保証部門が行う業務」とは信頼性保証部門による調査の計画、実施、文書化、報告等の業務であること。
ク 同項第14号の「その他必要な事項」には、次の内容が含まれるものであること。
① 試薬等の調製、保管、ラベル表示等に関する事項
② 報告書等の作成
③ コンピュータシステムのバリデーション、操作、保守、セキュリティ、変更管理及びバックアップ
④ 複数場所試験に関する事項
・・・後略・・・
薬食発第0613009号 平成20年6月13日
医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令の一部を改正する省令の施行について
※ 施行通知では第10条、11条関係で「機器」の「保守点検」に「標準操作手順書に従って定期的に実施されるテスト、校正、標準化等を含むものであること。」と記載されていますので「校正」が必要であることがわかります。また、第18条関係「適切に保存」する資料の対象にも「機器の保守、校正及び清掃の記録及び報告」が含まれている事からも「校正」の重要性がわかるのではないでしょうか。
※ なお、GLP省令(施行通知)には「コンピュータシステムのバリデーション」の要求がありますが、ハードウェア部分を含めた「バリデーション(適格性評価)」は記述がありません。ですが、「機器」「装置」における適切な機能と性能を担保するためには、GMP省令と同様に「バリデーション(適格性評価)」を実施する必要性が求められていると考えられます。
※ 主に医薬品業界では「GLP」「GCP」「GMP」「 GQP 」「GDP」「GVP」など、各種規格をまとめて「GxP」と評されますが、これら「GxP」の本質が高品質のための「規制」および「ガイドライン」であることを考えれば、バリデーション(適格性評価)の必要性もうなずけると思います。
ラボ室、研究室にもキャリブレーション(校正)は必要と思われます
> 「医薬品GLP(施行通知を含む)」をみていくと「機器」には「校正」が求められていましたので、ラボ室、研究室で使用する装置、機器にも、キャリブレーション(校正)は必要と言えます。
現実的に、「ピペット」を使って溶液操作をする際に100μLに設定していても、ちょうど100μLとれているかわかりません。それは実際は99μLかも知れないし、101μLかも知れません。このような状況では、実験の再現、検証を行うことは、かなり難しくなると考えられます。近年、研究における「再現性の問題」についてもこのことが少なからず影響しているのではないでしょうか?こういった再現性のような問題が指摘されないようにするにはラボ室、研究室で使用する装置、機器にはキャリブレーション(校正)が重要ではないでしょうか。
▼ 「ラボ室、研究室で使用する装置、機器のキャリブレーション(校正)及びバリデーション(適格性評価)」についても「無料オンライン相談会」からご相談していただくこともできます。
※ 当社は、フィールドでバリデーション・キャリブレーションを実施する立場から、規格の要求内容や定義を具体化(具現化)して、お客様に満足して頂ける作業をお届けする努力を続けています。
最後まで、お読みいただき有難うございました。